第10回研究会(公開研究会) 著者とともに 甲田烈『水木しげると妖怪の哲学』 (2016年、 イースト・プレス )を読む ◆日時 2021年5月9日(日)14:00~17:00 ◆場所 zoom(オンライン開催) ◆趣旨 妖怪の何がいったい私たちを釘付けにするのだろうか? 私たちには誰でも幼い頃に、妖怪の絵を見たり妖怪話を聞いたりして、妖怪の実在感にぞくぞくとさせられたり、時には泣き出してしまったことなどがあるはずだ。 その頃から時を経て今、「主語的論理の独断」による「身体なき自己」の日常を生きる私たち大人にとって、もう一度身震いするような妖怪の真実在を体験することはできるのだろうか? ひるがえって、妖怪に向き合うとはいかなることなのか? 本研究会では、妖怪を 「内部」から 観察し、経験するとはいかなることなのかを、 『水木しげると妖怪の哲学』 をテクストとして、著者である比較思想家の甲田烈さん( 東洋大学井上円了哲学センター客員研究員)とともに考えてみようと思う。 ◆著者 甲田烈( 東洋大学井上円了哲学センター客員研究員) ◆聞き手 奥野克巳(立教大学・異文化コミュニケーション学部教授) MOSA(マンガ家) ◆事前申し込み(先着20名) 以下のフォームに所定事項を記入の上お申し込みください。 https://forms.gle/7wt3AonStXBG5cbL8 2日前までに、開催URLをお送りします。 ◆参加 どなたでも参加いただけます。無料。
これは、これまで、50年近くにわたり「自然と文化」をテーマとして、トナカイ遊牧民であるカナダ・インディアンを皮切りに、各地でフィールドワークを行なってきた人類学者・煎本孝による、人類学者魂に溢れる思索の軌跡である記録である。著者のユニークな論点は、人間と動物は異なる存在者であるが、本来的には同一であるとする思考を「初原的同一性」という概念で捉え、それが、生態的な不確定性に向き合うカナダ・インディアンに人間と動物の互恵性の思考を開き、人間と人間の間にも「わかちあいのこころ」という生存戦略を生んだと見る点にある。初原的同一性と互恵性の原理はまた、後期旧石器人が残した洞窟壁画にも見いだされる。さらに、アイヌのクマ祭(イヨマンテ)の中にも同様の原理が見られると著者は言う。極北ロシアのトナカイ遊牧民コリヤークでも、生態と宇宙は連関しつつ、人間と動物の間だけでなく、神を含んだ3者間での交換が見られ、他方、その構造は、人々の間で、富の分配と平等原理という「こころ」のテーマに結びついていると、著者は主張する。モンゴル遊牧民では、こうしたテーマが、激しく艶やかでかつ繊細なシャーマニズムのパフォーマンスの中に表現されているという解釈は、とても興味深い。ラダック王国では、生態的な問題の解決が、一妻多夫制という社会性の領域にもたらされ、さらにはその社会的な仕組みの外側に設けられた僧という制度の中で、どのようにして慈悲が実践されるのかという点に著者の目が向けられている点も示唆に富んでいる。最後に著者は、ラダックの僧院の祭礼に現われる地方神の登場を演出する楽士カーストと仏教思想の平等原理をめぐる葛藤の考察をつうじて、チベット仏教の中に、人間における「こころ」のコントロールという課題を読み解くという課題に挑戦している。著者によれば、慈悲にまで昇華された人間の「こころ」の問題の根源は、自他の区別という二元論を越えたところにある、初原的同一性という思想と実践である。つまり、初原的同一性が、生態と社会の領域に浸透し、変形・変奏して、今日の人間の「こころ」の自己制御という課題にまでつながっているのだ。(奥野克巳)
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